DX推進で自治体の業務を効率化&スマートに
学校や公共施設など、自治体が管理する建物は数が多く、修繕や維持管理に多大な手間とコストがかかっているのが現状。JMではこうした自治体の施設管理業務を一括して請け負う「包括施設管理」事業を展開しています。従来の業務プロセスは紙の書類とメールが中心で、非効率という課題がありましたが、社内のシステム開発チームと協力し、業務のDXを推進。効率化とコスト削減を実現し、自治体の業務改革に大きく貢献しています。
梶間 鷹斗
2020年新卒入社
2020年新卒入社。仙台サービスセンターで現場に近い立場での業務に携わり、現場や顧客の課題解決を務める。2022年、本社のDX普及チームに異動し、包括施設管理業務のデジタル化を担当。現在はICT・DX室に所属し、全国のDX推進を幅広く手がけている。
自治体の施設管理業務に革新を
私が包括施設管理のデジタル化プロジェクトに携わることになったのは、入社3年目のこと。包括施設管理とは、自治体が所有する公共施設を総合的に保守管理する事業のことです。
当時、自治体の施設管理業務は、すべて自治体職員が行っていました。例えば、学校のトイレが壊れたら、学校の先生から校長や教頭に相談し承認をもらい業者に見積もりを依頼、予算を確認してから工事の手配をする。こうした一連のやりとりが、電話や紙の書類、メールでアナログに行われていたのです。施設管理の知識経験が豊富な職員ばかりではないのが実情で事務負担が大きな課題となっていました。
そんな中、JMが自治体への包括施設管理業務を開始。ちょうどその頃、私は2年間仙台サービスセンターで現場業務に携わった経験やシステムの教育を実施した経験から、本社のDX普及チームに異動することになり、この事業にも参画することになりました。
「これまでのアナログな業務を、デジタルの力で効率化できないか」と現場の施設管理業務を間近で見てきた私は、課題解決への強い想いを抱いていました。
現場の声に耳を傾け、課題を明確化
プロジェクトを始めるにあたり、まず私は自治体の施設管理担当者や、実際に修繕工事を行う業者の方々に話を聞くことにしました。すると、
「修繕の依頼を受けてから工事が完了するまでに、平均して1ヶ月以上かかっています。書類のやりとりだけで2週間。それから業者の手配で1週間。実際の工事で1週間。こんなに時間がかかっては、と思うんですけど、どうしたらいいか…。」とある自治体の方から、意見をいただいたのです。
一方、ある業者の方からは、「見積書や報告書を作るのに、かなりの時間を取られています。現場の写真を撮影し、会社に戻ってPCで資料を作成。それを自治体に提出し、承認を得る。すべて手作業なので、効率が悪いなと感じています。」と声が上がりました。
現場の方々の声を聞くにつれ、業務の非効率さが浮き彫りになっていきました。そして見えてきた課題は主に3つ。
1つ目は、情報共有の不足。自治体と業者間のコミュニケーションが、電話やメールに頼っているため、情報が散在している。
2つ目は、書類作成の手間。見積書や報告書などを手作業で作成しているため、業者の負担が大きい。
3つ目は、進捗管理の難しさ。修繕の進み具合を自治体職員が把握しづらく、スケジュール管理が難しい。
これらの課題を解決することが、私に課せられたミッションでした。
デジタルの力で業務を効率化
明確になった課題を解決するために、早速既存システムの見直しを始めました。
まずは施設ごとの修繕履歴や進捗状況を一目で把握できる包括施設管理システムを作成。従来はExcelで管理されていた情報をクラウド上に集約することで、情報の一元化を実現し、自治体職員の負担が大きく軽減されました。
次に協力業者向けには、スマートフォンで現場の写真を撮影し、それにコメントを付けて報告できる電子帳票アプリを導入し指導を行うことで、手書きの見積書や報告書を作成する手間を大幅に削減できました。
さらに自治体とのコミュニケーションを円滑化するために、修繕の進捗状況を可視化し自治体職員がリアルタイムで進捗を把握できるようにしました。
こうして開発した包括施設管理システムを実際に運用すると、業務効率は大幅に向上し、修繕依頼から工事完了までの工数と期間が大幅に短縮されました。また、システムを通じて現場の課題が即時に可視化されるようになったのも大きな変化です。
蓄積されたデータを分析することで、故障や不具合の予兆を検知できるようになり、予防保全が可能になったのです。包括施設管理システムは自治体の業務を大きく変えただけでなく、施設利用者の安全性向上にもつながりました。
自治体DXのさらなる推進に向けて
現在、私が構築したシステムは全国9つの自治体で導入されています。包括施設管理システムを導入した自治体からは、業務の効率化や事務作業の負担軽減など、ポジティブな反応をいただいています。またデータの蓄積と分析によって、施設の予防保全が可能になったことも大きな成果だと考えています。
しかし私たちの取り組みはここで終わりではありません。今後は自治体だけでなく、民間企業が管理する施設へのシステム展開も視野に入れています。施設管理のデジタル化で得たノウハウを活かし、より多くの領域にイノベーションを起こしていきたいと考えています。最終的にメンテナンスフリーを実現したいというJMの目標に、私は施設管理のDX化で貢献したいと思っています。
これからも現場の声に耳を傾け、デジタル技術を活用しながら、新たな挑戦を続けていきます。